グラフィティ・アーティストがぞくぞく来日

これからしばらくの間、世界的に知られたグラフィティ関連のアーティストがぞくぞくと来日のもよう。


まずSWOONは現在来日中。ミクシィ上に情報がある。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=47434071&comm_id=1148516


それからもうすぐKRが来る、Levi'sとのコラボレーション。
http://levi.jp/feature/krink/


ヨコハマ映像祭にはGraffiti Research Labが・・(京都でもワークショップがあるみたい)。
http://www.ifamy.jp/programs/single/216/
http://www.cbc-net.com/topics/2009/10/grl_kyoto.php


それにしても、これら来日の全てがいわゆる日本のグラフィティ・シーンあるいはストリート・シーンとは距離のあるところで行なわれているというのは象徴的だ。SWOONは芸大関連の企画、KRは企業とのタイアップ、GRLもどちらかというとアートよりの企画でよばれている。


いや、別にそういう状況に対して批判的なスタンスをとるわけではないし、僕自身はグラフィティをポストグラフィティ、そして現代美術というコンテクストの中で考えているわけだから、むしろこういう事態に親和性が高いように見えるかもしれない。


でもやはり、どことなく違和感を感じてしまうのも否定できない。なぜなら、今回の来日ラッシュの中で、グラフィティのコンテクストが上滑りしているようにみえるから。もちろん、それまでグラフィティのグの字も知らなかった人たちが、こういう機会にグラフィティ(というよりポストグラフィティ的な流れ)に触れるのは良いことだと思う。ただ、そこで提示されているグラフィティのイメージは、どことなく取ってつけたような言葉で意味づけされている気がする。


例えば(上のリンクと同じだけど)ここ。
http://www.ifamy.jp/programs/single/216/


ここに書いてあること自体は、全体として間違っていないし、いやむしろそれなりに的確でもあると思う。でも「グラフィティにスプレーは必要ないし、高度に洗練されたスキルも必要ない。」というのはさすがにどうかと。この言い回しに、まさに「言葉の上滑り」が表出している。グラフィティのことをちゃんと知っている人なら、スプレーやスキルが必要ないと言い切ってしまうのにはためらいを感じるはず。これはスプレーじゃなきゃグラフィティじゃないとか、スキルがなきゃダメだということではなくて、そもそもそれが何であったか、そして今どうなってきているのかというコンテクストの認識の問題だろう。それにグラフィティのスキルっていうのは、単にスプレーをうまく使って複雑なレタリングを描くということだけではない。例えばBNEやそれこそKRを見れば、それはわかる。


誤解を招かないように急いで付け加えておくけど、何もコンテクストにのっとっていればOKというふうにはサラサラ考えていなくて、重要なのはいかにコンテクストにおさまらない特異なものがそこからあぶり出されてくるか、ということなのだけれど、それは単にコンテクストを捨象している(=何も知らない)というのとは正反対なわけだ。


自分の立場を擁護するわけではないけれど、僕としてはやはりグラフィティの経緯や性質をきちんと分析的に捉えた上で、コンテクスチュアルな因果性の中でポストグラフィティということを考えたい、と再認識。もちろんこういう状況になった背景には、今までになされるべきであったグラフィティ分析/批評の仕事がなされていないという現状があるので、僕を含めて色んな人に責任があるのだろうけど。


とはいえ、(ポスト)グラフィティ的な流れがグラフィティ以外の場で成立すること自体はそもそも少ないわけだから、今回のこの来日ラッシュは基本的にはウェルカムなはず。僕はどれだけ実際に足を運べるかわからないけれど(年末のプランに向けて絶賛制作中・・)、SWOON、KR、GRLとそれぞれ傾向も異なるし、興味のある方は是非見に行ってみたらどうでしょう?


※念のため。このエントリの内容は今回の来日ラッシュの特定のアーティストやその招集側を非難するものではないのであしからず。ただ、誰のせいでもないままに、やんわりと進んでいる全体の状況に対する感想を書いただけです。